軽井沢のおもひで

『おもいでぽろぽろ』というアニメがありますが、
私の軽井沢での思い出はまさにああいうかんじ。
二度といかないかもしれない旅行とも違う、かといって本当のふるさとでもない、
とても不思議なおもいでの場所の記憶を辿ってみると.....

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馬で歩く並木道

小学生か幼稚園の頃のおもひでですが...
あの頃は、毎日連れてこられるこの長野の小さな街が、どんなに素敵な場所かということも
まったくわかっておりませんでした。学校の友達が「田舎のおばあちゃんのとこにいく!」
というのと同じ感覚でした。(事実、当時から今でも、祖父母は8月はずっと軽井沢にいるのです。)
今でこそ、美術館やパターゴルフ等、子供でも楽しめる場所がいろいろありますが、
当時の私には、現地に友達もいないし、2,3日もいれば飽きてきたものです。
そんななか、今でいう新軽井沢(駅と旧軽の間)に、馬にのせて街を歩かせてくれる
サービスがありました。確か草軽交通さんがやってたと思います。
自分の3倍くらい背丈のある馬の背中に乗り、観光客の羨ましそうな顔を見下ろしつつ、
万平通りとかを練り歩いたものです。(もちろん、おじさんがひっぱってます)
時々知ってる人に会ってしまったり、人が大勢いる道の途中で馬に粗相をされたりすると
子供ながらにとても恥ずかしかったことを覚えていますが、それでも、毎年ます釣りと
この乗馬だけは、とても楽しみでした。今はもうこれは行われていないのですが、
厩舎の場所は、今でも建て替えられることなく当時の面影を残しているので、
その前を通る度に「よく馬にのったねー」とつい言ってしまいます。(笑)

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素敵な出逢い

「いなば かつひこ」さんという画家の方をご存知でしょうか?
もし、そのお名前も知らなくても、軽井沢ファンの人だったら『ウッドマン』といえば
ピンとくるかしら?軽井沢でオリジナルカードショップ『ウッドマン』を経営して
ご自分で書かれた絵を素敵なポストカードにして販売なさっています。
1972年からお店を開いているそうですが、おそらく私は開店当時からの熱烈なファンです。
子供の頃から暑中見舞いは必ずここのはがきで、と決めていました。
軽井沢を彷彿とさせる爽やかなタッチの
可愛らしい絵ばかりで、いつも数十枚買い込んでいます。

昨年たまたまとなりのお店も借り切っていなばさんの原画展をやっていて、
偶然ご本人とお話することができました。とても静かで素敵なおじさま、というかんじの方で、
創作時のエピソードをいろいろ伺うことができました。わたしは大興奮で、さっそくいなばさんの
絵本『おおきな木のした だれかさんがとおる』を買ってサインをいただきました。
さらに、原画を1枚買い求めて、新しい自分の部屋に飾りたいと思い、
1枚の絵を手にしたところ「あ、それは..」と、一瞬いなばさんの顔がこわばりました。
おおきな熊さんが小熊をおんぶしてる後ろ姿の小さな額なのですが、
実はいなばさんの大のお気に入りだったそうで、販売するのもまだ悩んでいる、とのこと。
そう聞くと、もう絶対ほしいっ!!ちゃんと立派な額縁にいれて大切にする、という条件で
売っていただきました。今でも、大事に、私の部屋に飾ってあります。

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ジョン・レノンと蕎麦屋

軽井沢は、外国人の方がおおい場所でも有名です。ショー牧師が日本初のリゾートととして
軽井沢を開いてから、実に多くの外国人の方がここを訪れています。
旧軽井沢(以後、旧軽)に昔からある店のいくつかの看板が、その事実を物語るかのように
英語表記がされています。日曜日ともなれば、町の小さな教会からミサを終えてでてくる
外国人の姿を見かけるのも少なくありません。
あれは、何年前の夏のことだったでしょう.....?
私は家族で旧軽銀座をいつものように歩いていました。
とても暑い日で、そろそろお腹が空いたからどこかでお昼にしよう、と話あっていたときでした。
旧軽銀座の一番突き当たりまできたので、そこにある蕎麦屋へ入りました。
我々はタイミングがよく、すぐにテーブルにつけましたが、ちょうどお昼時だったので、
次から次へとお客が入ってきて、たちどころに満席になりました。

しばらくすると、ある外国人家族が店の暖簾の間から中の様子をうかがってます。
突然店内がざわつきはじめました。
「ほら、ジョン・レノンとオノヨーコよ!」
彼らは小さな男の子を連れていました。(ショーン?)
小学生の私には、異国の有名人よりも、目の前の蕎麦のほうが数段魅力的でした。
今思えば、写真の1枚くらい撮っておけば..とも思いますが。(^^;
あまりにも店内が騒然となってしまったため、彼らはあきらめてその場を立ち去りました。
数年後、彼が銃弾に倒れたとき、その蕎麦屋での光景が何度も脳裏を駆け巡り、
涙が止まらなかったものでした。←感情移入しやすいタイプ
ちなみに、私の叔母は「ヨーコ」という名前で、外国人と結婚し、
その息子は「ショーン」という名前です。軽井沢とはまったく関係ありませんけど。

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しけ虫・うぐいす・カエルの卵

都会育ちの私にとって、軽井沢は、自然の宝庫。普段お目にかかれない生き物たちに
たくさん出会える絶好の場です。
まず、しけ虫。この呼び方、もしかしたら我が家でだけ使ってる呼び方かもしれない..。
そら豆のような形の胴体がシマシマ模様で、細い足が妙に長くてぴょんぴょんしてる奴。
湿気のある場所にいつもいるので「しけ虫」と呼んでます。(正式名称、誰か教えて!)
別に、かまれたり、害があるわけではないと思うんだけど、いるだけで不愉快。
しかもそいつは糞を撒き散らします。いつも夏の最初にすることは、そいつらの退治。
へたにつぶすと、体液で部屋が汚れるので、生きたまま外に追っ払うか、
生け捕りにしてトイレで水葬...。しけ虫くんたちには申し訳ないけど、
ここで出会ったが運の尽き、と思って、今後は私の目の前には現れないでね!

軽井沢は野鳥の宝庫でもあります。朝早起きすると、珍しい鳥がそこかしこに...。
私の姉は、口笛でうぐいすの真似をするのがとても上手。
山道を散歩中、うぐいすの鳴き声が聞こえると、必ず「返事」をしてます。
で、その姉の泣き真似が本物に聞こえるらしく、またむこうから「返事」がきます。(笑)
それでいつも、数十回うぐいすと姉とで鳴きあってます。
もしかして、向こうの声も人間だったりして...。(爆笑)

軽井沢にはいつも夏に訪れるのですが、たまに黄金週間のときにもいったりします。
今はもうないのですが、小学生の頃、5月に軽井沢を訪れると、道沿いの小川に、
必ず、といっていいほど、カエルの卵がところてんのような形でにょろにょろいました。
自然の多い地区に住んでいる方には珍しくもない光景なのかもしれませんが、
東京の郊外に住んでいた私でさえも、さすがにそういった光景は
なかなか目にすることはできませんでしたので、見つけたときはもう大喜びでした。
ましてや、その卵がおたまじゃくしになって大軍で泳いでる姿といったら...。
東京にもって帰って友達に自慢したい気持ちを押さえるのがとても辛かったことを
よく覚えています。(軽井沢の自然を東京に持ち帰るのは子供心によくない、と決めていたので。)

 

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